お兄様と呼び慕う少女

 それなりに裕福で子供に甘いクソったれみたいな両親がA地区貴族の頭のおかしい女に処刑台へと送り込まれたのは、オレがまだ親の庇護下にいなきゃいけない幼い頃のことだった。
 家も何もかも没収され、唯一オレの手元に遺されたのは珍しく母親が盗むのではなく、お金を出してオレに買い与えたシャボン液につけなくてもシャボン玉遊びが無限にできるという玩具のストローのみ。こんなのがあっても、何の生活の足しにもならないというのに。
 欲しい物があれば盗んで、時には持ち主を殺して、そうして何年も一人で生きてきた。裕福なくせに手癖の悪い両親に育てられたオレは、手癖の悪い子供に育っていった。

「聞いたか? 処刑台の女王サマが殺されたんだってよ」
 両親を殺したA地区貴族のイカれた女も誰かに殺されたと風の噂で聞いたのは、路地裏で薄汚れた変わり者の少女を拾った少し後のことだった。
ユーリとクラリーチェの出会い