路地裏の逃走

 ――あそこの緑の髪の女の子にしよう。
 そんな声が”聴”こえたから、路地裏に蹲るのをやめて慌てて立ち上がる。後ろから舌打ちと複数の足音が追いかけてくるのを聴きながら、誰もいない所を探して走り抜ける。
 あの場所はもうダメだな、最近よく売人が通るルートになってしまったみたい。人通りも少なくて静かで気に入っていたのに。
 ガンガン鳴り響く声に頭を痛めながら、それでも休むことなく周りの声を聴く。こうしないと弱いわたしはすぐに大人に捕まって、売り飛ばされちゃうの。そうして孤児院からいなくなっていった子供たちを、わたしは知ってるの。
 「非常食」には、昨日店先で目が合ったあの子みたいにはなりたくないの。
(ああ、神様)
 わたしは一体いつになれば、救われるのかな。
奴隷も非常食もお断り