ある幽霊の回想
ボクは傍観者だ。十六年ボクを育てたという、”シスター”は昔から一切年を取っていない。この女の人に育てられて、なんとなくだけれどこの世界について悟ってしまったボクは、傍観者になることに決めた。そうすれば、この世界で上手に生きられる気がしたから。でも彼女は、そんなボクを鼻で笑ってこう言った。
「馬鹿ね、貴女全く傍観者になりきれてないじゃない」
「……そうかな? でもボクが死んだって誰も……クラリーチェだって、悲しまないよ」
「あら、心外ね。リーチェを何だと思っているの? 貴女が死ねばリーチェだって悲しむくらいするわ」
「ふふ、本当かな。じゃぁ、約束ね。ボクが死んだら悲しんでくれる?」
「まず死なないよう努力なさい。……まぁ、いいわ。約束してあげる」 傍観者のボクを否定したボクのお姫様。彼女の為に傍観者だと自分を諦めるのを、辞めようと。
……そう、思っていたんだけどなぁ。
「ほらね? ボクの言った通りだったでしょ」
全て忘れてしまった彼女の背中に、笑いかけた。君はボクの死を、悲しむことはない。
クラリーチェの記憶に遺れなかったトルテ