果たされなかった約束
なんだかとっても大切な約束を、忘れてしまっているの。「……そうね。あなたは大切なことを沢山、忘れているわ。きっとその中に、大切な約束もあったのよ」
花に水をやりながら呟いた私の言葉に、再生のスペシャリストと呼ばれる彼女は目を伏せながら答えた。
「貴女はそれが何か、知らない?」
「ごめんなさい。知ってるかもしれないけど、わたしの口から言ってはいけないと思うの」
彼女はまろ眉を八の字に下げて、悲しそうに笑った。すぐにいつもの何を考えてるか分からない無表情に戻ったが、とても懐かしいものを見た気持ちになった。
「大切な約束を、した筈なのよ」
じょうろの持ち手をぎゅっと握り締めながら、思い出せない何かに思いを馳せる。
――ほらね? ボクの言った通りだったでしょ。
誰かの悲しそうな笑い声が、聞こえた気がした。
×××